中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問156 (経営法務 問20)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問156(経営法務 問20) (訂正依頼・報告はこちら)

民法が定める売買契約の契約不適合責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 売主が種類または品質に関して売買契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、追完請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができるが、代金の減額請求については、民法に明文の規定はない。
  • 買主が売買の目的物の数量に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない。
  • 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しない場合について、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約も可能であるが、かかる特約が存在する場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができない。
  • 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、履行の追完を請求することができるが、売主は、買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課するものであるときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができる。

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この過去問の解説 (2件)

01

民法が定める売買契約の契約不適合責任に関する問題です。

 

※「民法が定める」とあることから、商人間の売買を前提とした商法の規定ではないと解釈して解説します。

選択肢1. 売主が種類または品質に関して売買契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、追完請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができるが、代金の減額請求については、民法に明文の規定はない。

売主が種類または品質に関して売買契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、追完請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができますが、代金の減額請求についても民法に明文規定がされています

 

したがって、不適切な選択肢です。

選択肢2. 買主が売買の目的物の数量に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない。

買主が売買の目的物の種類または品質に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければなりません。

 

目的物の数量・権利に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、 期間の制限なく権利行使(追完請求、損害賠償請求および契約の解除)することができるため不適切な選択肢です。

選択肢3. 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しない場合について、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約も可能であるが、かかる特約が存在する場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができない。

引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しない場合について、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約も可能ですが、かかる特約が存在する場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができないことは、売買契約の契約不適合責任に関する記述として最も適切であり正解の選択肢となります。

選択肢4. 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、履行の追完を請求することができるが、売主は、買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課するものであるときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができる。

引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、履行の追完を請求することができますが、売主は、買主が請求した追完方法が買主に不相当な負担を課するものではないときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができます。

 

そもそも、取引の相手方に対して「不相当な負担を課する」ことはできません。不相当な負担とは、たとえば手直しすれば十分に取引の目的が果たせるものを、最初から作り直せと要求するようなものであり不適切な選択肢です。

 

※本選択肢では、売主と買主で主語が入れ替えられていることにも注意が必要です。文章量が多く急いで読み飛ばしてしまうと、本選択肢のような主語の入れ替えを見落としてしまう可能性が高くなります。

まとめ

【補足】

 

解説の冒頭で商法に言及していますが、商法では、買主は目的物を受領後「遅滞なく検査」し、契約不適合があるときは「直ちに」売主に通知しなければ契約不適合責任を追及できません。検査ですぐに分からなかった場合であっても、引渡後6か月以内に通知しなければ契約不適合責任を追及できません。

 

これは、商人であれば日々数多くの商品のやり取りを行なっていて、契約不適合があっても気付きやすいと思われるためです。

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02

本問は、民法改正により導入された契約不適合責任に関する基本的な知識を問う問題です。契約不適合責任とは、売買契約において引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合に売主が負う責任のことを指します。改正民法では買主の救済手段として、①追完請求権、②代金減額請求権、③損害賠償請求権、④解除権の4つが明文化されています。

選択肢1. 売主が種類または品質に関して売買契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主は、追完請求、損害賠償請求および契約の解除をすることができるが、代金の減額請求については、民法に明文の規定はない。

この選択肢は誤りです。民法第563条では、買主の代金減額請求権について明文で規定しています。

改正民法では、買主の救済手段として以下の4つが明確に規定されています:

追完請求権(修理や代替物の引渡しなどの請求)

代金減額請求権(契約不適合の程度に応じた代金の減額請求)

損害賠償請求権

解除権

したがって、「代金の減額請求については、民法に明文の規定はない」という記述は誤りです。

選択肢2. 買主が売買の目的物の数量に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない。

この選択肢は誤りです。民法第566条では、「買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」と規定していますが、これは「種類又は品質に関する契約不適合」の場合に適用される規定です。

数量に関する契約不適合や権利に関する契約不適合については、この1年の通知期間の制限は適用されません。したがって、「目的物の数量に関して売主の契約不適合責任を追及する場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない」という記述は誤りです。

選択肢3. 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しない場合について、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約も可能であるが、かかる特約が存在する場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができない。

この選択肢は正しいです。民法第572条では、「売主の契約不適合責任を負わない旨の特約がある場合であっても、売主が知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない」と規定しています。

これは、売買契約の当事者間の合意により契約不適合責任を免除または制限することは原則として可能ですが、売主が契約不適合の事実を知りながら買主に告げなかった場合には、そのような特約があっても売主は責任を免れることができないという意味です。この規定は、売主の悪意や詐欺的行為から買主を保護するためのものです。

選択肢4. 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して売買契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、履行の追完を請求することができるが、売主は、買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課するものであるときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができる。

この選択肢は誤りです。民法第562条第2項では、「売主は、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。ただし、買主が請求した方法による履行の追完が契約内容に適合しないものの価値及び買主が履行の追完に関して有する利益に照らして、不相当な負担を売主に課するものでないときは、この限りでない」と規定しています。

つまり、買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課する場合には、売主は異なる方法で追完できますが、不相当な負担を課するものでない場合は、買主が請求した方法で追完しなければなりません。選択肢の記述では「買主が請求した追完方法が売主に不相当な負担を課するものであるときは」となっていますが、正しくは「買主が請求した方法による履行の追完が...不相当な負担を売主に課するものでないときは」買主の請求した方法と異なる方法による追完はできないのです。

まとめ

契約不適合責任は、2020年4月の民法改正で従来の「瑕疵担保責任」に代わって導入された制度です。この改正により、契約の内容に適合しない目的物が引き渡された場合の買主の救済手段が明確化され、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、解除権の4つが明文で規定されました。

また、特に注意すべき点として、種類または品質に関する契約不適合の場合には、買主がその不適合を知った時から1年以内に通知する必要がありますが、数量や権利に関する契約不適合については、この期間制限はありません。

さらに、契約不適合責任を負わない特約がある場合でも、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れることができないという規定は、取引の公正さを確保するための重要な原則です。これは、売主が悪意で契約不適合の事実を隠した場合に、買主の利益を保護するための規定と言えます。

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