中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問145 (経営法務 問9)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問145(経営法務 問9) (訂正依頼・報告はこちら)

独占禁止法が定める課徴金および課徴金減免制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、本問においては、調査協力減算制度における協力度合いに応じた減算率は考慮しないものとする。
  • 違反行為者が中小企業の場合において、中小企業が当該違反行為について主導的役割を果たしていないときは、大企業に対する課徴金算定率から、資本金の割合に応じた減額が認められる。
  • 課徴金減免制度における申請は、電子メールによる方法に限られる。
  • 公正取引委員会による調査開始後に単独で課徴金減免申請を行い、その申請順位が1位の場合、申請順位に応じた課徴金減免率は100%(全額免除)である。
  • 再販売価格の拘束行為が、課徴金の対象行為となることはない。

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この過去問の解説 (2件)

01

課徴金および課徴金減免制度に関する問題です。

 

本問では「調査協力減算制度における協力度合いに応じた減算率は考慮しない」という設定があるため、必ず確認しておきましょう。

選択肢1. 違反行為者が中小企業の場合において、中小企業が当該違反行為について主導的役割を果たしていないときは、大企業に対する課徴金算定率から、資本金の割合に応じた減額が認められる。

課徴金算定率は、違反行為の対象となった商品・役務の違反行為期間中の売上額に一定率(10%)を乗じたものとなります。

 

この一定率の10%について、違反行為者が中小企業の場合には4%となりますが、中小企業が当該違反行為について主導的役割を果たしていなくても、大企業に対する課徴金算定率から資本金の割合に応じた減額は認められません

 

したがって、不適切な選択肢です。

 

選択肢2. 課徴金減免制度における申請は、電子メールによる方法に限られる。

課徴金減免制度における申請が電子メールによる方法に限られることは、課徴金および課徴金減免制度に関する記述として最も適切です。

 

細かいことですが、「相談」は電話等でも可能です。調査協力減算制度の適用を受けるために申出書を提出する場合は、郵送や持参等も可能です。

 

したがって、正解の選択肢となります。

選択肢3. 公正取引委員会による調査開始後に単独で課徴金減免申請を行い、その申請順位が1位の場合、申請順位に応じた課徴金減免率は100%(全額免除)である。

申請順位に応じた課徴金減免率は100%(全額免除)になるのは、公正取引委員会による調査開始に単独で課徴金減免申請を行い、その申請順位が1位の場合です。

 

公正取引委員会による調査開始後の場合は、課徴金減免率は最大でも10%であり不適切な選択肢です。

 

なお、協力度合いに応じた減算率が最大20%追加で設定されていますが、本問では「調査協力減算制度における協力度合いに応じた減算率は考慮しない」と設定されています。

選択肢4. 再販売価格の拘束行為が、課徴金の対象行為となることはない。

再販売価格の拘束行為は、課徴金の対象行為となります。したがって、不適切な選択肢です。

 

どのような行為が課徴金の対象行為に該当するかについては、下記URLを参照してください。

https://www.jftc.go.jp/dk/seido/katyokin.html

(出所:公正取引委員会「課徴金制度」)

まとめ

【補足】

 

課徴金および課徴金減免制度に関する問題は、令和5年度(2023年)にも出題されています。

 

元々出題頻度の高い論点ですが、2年連続での出題であり、次年度以降に受験される際は過去問題を復習して対応できるようにしておく必要があります。

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02

独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)における課徴金制度と課徴金減免制度(リニエンシー制度)に関する問題です。課徴金とは、カルテルや談合などの不当な取引制限行為や優越的地位の濫用などの違反行為に対して、公正取引委員会が行政処分として課す金銭的不利益です。課徴金減免制度は、違反行為の自主的な申告と調査への協力を促進するために設けられた制度で、申請順位などに応じて課徴金が減免されます。問題文には「調査協力減算制度における協力度合いに応じた減算率は考慮しない」という条件が付されていることに注意が必要です。

選択肢1. 違反行為者が中小企業の場合において、中小企業が当該違反行為について主導的役割を果たしていないときは、大企業に対する課徴金算定率から、資本金の割合に応じた減額が認められる。

この選択肢は誤りです。独占禁止法では、中小企業に対する課徴金算定率は、大企業に比べて軽減されています。具体的には、不当な取引制限(カルテルなど)の場合、大企業は原則として売上額の10%ですが、中小企業は4%とされています。しかし、この軽減は中小企業であるという事実のみに基づくもので、「主導的役割を果たしていない」ことや「資本金の割合に応じた減額」という概念はありません。むしろ、中小企業であっても「主導的役割を果たした場合」には、課徴金の加算(1.5倍)の対象となります。したがって、「資本金の割合に応じた減額が認められる」という記述は誤りです。

選択肢2. 課徴金減免制度における申請は、電子メールによる方法に限られる。

この選択肢は正しいです。独占禁止法に基づく課徴金減免制度において、正式な申請は電子メールによる方法に限定されています。公正取引委員会の「課徴金減免制度における申請手続について」によれば、課徴金減免申請は公正取引委員会事務総局審査局管理企画課課徴金減免管理官宛ての電子メールによって行うこととされています。郵送や持参などの方法は認められていません。ただし、事前相談は電話などで行うことができ、また、調査協力減算制度の適用を受けるために提出する申出書については郵送や持参も可能ですが、本問においては「調査協力減算制度における協力度合いに応じた減算率は考慮しない」とされているため、この点は考慮しません。

選択肢3. 公正取引委員会による調査開始後に単独で課徴金減免申請を行い、その申請順位が1位の場合、申請順位に応じた課徴金減免率は100%(全額免除)である。

この選択肢は誤りです。独占禁止法の課徴金減免制度では、申請のタイミングと順位によって減免率が決まります。公正取引委員会による調査開始前の申請で1位の場合は、課徴金が100%免除(全額免除)されますが、調査開始後の申請では、たとえ申請順位が1位であっても、課徴金減免率は100%にはなりません。調査開始後の申請の場合、申請順位に応じた減免率は、最大でも20%(申請順位1位〜5位まで)となります。なお、問題文の条件により、調査協力減算制度による追加の減算は考慮しないため、調査開始後の申請で1位であれば20%の減免となります。

選択肢4. 再販売価格の拘束行為が、課徴金の対象行為となることはない。

この選択肢は誤りです。再販売価格の拘束行為(再販売価格維持行為)は、独占禁止法第2条第9項第4号に規定される不公正な取引方法の一つであり、課徴金の対象となります。具体的には、独占禁止法第7条の2第1項により、製造業者等がその供給する商品の販売価格を購入者に対して指示し、その価格で販売することを強制する行為などが課徴金の対象とされています。課徴金算定率は、違反行為期間中の売上額の3%(小売業2%、卸売業1%)と定められています。したがって、「再販売価格の拘束行為が、課徴金の対象行為となることはない」という記述は誤りです。

まとめ

本問の正解は選択肢2です。課徴金減免制度における申請は、電子メールによる方法に限られるという記述が正しいものでした。独占禁止法における課徴金制度は、違反行為の抑止と摘発促進のための重要な制度です。特に課徴金減免制度は、違反事業者の自主的な申告を促すため、申請順位や調査協力の度合いに応じて課徴金を減免するもので、カルテルや談合などの摘発に大きく貢献しています。実務上は、違反行為の疑いがある場合、早期に専門家に相談し、適切な対応を取ることが重要です。独占禁止法違反は多額の課徴金だけでなく、社会的信用の失墜や損害賠償請求などの大きなリスクを伴うため、コンプライアンス体制の整備と維持が不可欠です。

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