大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問38 (倫理(第1問) 問7)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問38(倫理(第1問) 問7) (訂正依頼・報告はこちら)

以下を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのAとBは、各々全て同じ人物である。

次の会話は、高校生Aとそのいとこの大学生Bが交わしたものである。

A:昔の思想家って、本当に色んなこと思い付きますよね。みんな天才だっていうのはよく分かるけど、色々ありすぎて、とても覚えきれないですよ。
B:おつかれさま。それじゃあ、バラバラに暗記するんじゃなくて、思想の流れを理解するようにしたらどうかな。天才って言われる人たちも、ゼロから思想を生み出したというより、a 先人の考え方を継承しつつ、批判したり再解釈することで、自分の思想を確立したっていうパターンが多いみたいだよ。
A:え、そうなんですか。例えば?
B:例えば、b 儒教の思想家たちはみんな孔子の思想を継承しているよね。
A:なるほど、それはそうか。でもじゃあ、最初の孔子は?
B:孔子もやっぱり、昔の思想を参考にしてるんだよ。そして、儒教の仁や礼の思想へのc 批判から、また別の思想が生まれてゆくんだよね。
A:本当だ、教科書にも「〇〇は✕✕を引き継いで」とか「△△を批判して」みたいな文章、たくさんありますね。読み飛ばしてたな…。これ、宗教の思想家にも当てはまりますか?
B:例えばゴータマ・ブッダは、既存の宗教のd 生命観や理想を受け継ぎながらも、それに飽き足らず、自らの道を求めたと言えるんじゃないかな。

次の会話は、AとBが交わした会話の続きである。

A:さっきの、批判して再解釈するって話ですけど、e ユダヤ教とキリスト教f イスラームって、教科書に続けて書いてありますよね。その関係も同じように考えると分かりやすいですね。
B:そうだね、歴史の流れの中に位置付けると理解しやすいね。ただし、それは一つの見方にすぎないということも覚えておいてほしいな。
A:他の見方もあるってことですか?
B:それぞれの信仰の立場から見れば違うよ。例えばユダヤ教徒は自分たちの聖書を「旧約」とは呼ばないし、ムスリムはクルアーンを聖書の再解釈ではなく、神の言葉をそのまま記したものと考えているわけだから。
A:なるほど…。そういえば、今日レポートの課題が出たんですけど、まずはテーマに関する本を読んで、先人の議論を理解した上で自分なりに批判や意見を述べるように、って言われたんです。さっきの、g 受け継ぐ、批判するって話となんだか似てますね。
B:その通りだと思う。その意味では、私たちが今やっている勉強やレポート執筆なんかも、古代から思想家たちが行ってきた営みの延長線上にあるんだと思うよ。

下線部gに関して、Aは授業中に、ギリシアの自然哲学者たちの主張に関する次の資料を示され、説明を受けた。その説明をAがまとめた後のノート中のa・bに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。

資料 アリストテレス『自然学』より
自然哲学者たちは、無限なるものには、その元になるもの(アルケー)はなく、むしろそれがその他のものの元になっていて、万物を包摂し、万物を統べていると考えている。……そして彼らは、それが神的なものであるとも考えている。アナクシマンドロスをはじめ自然哲学者たちの大多数の主張によれば、それは不死にして不滅だというのだから。

ノート
ギリシアの自然哲学者たちは、この世界の全体について筋道立った説明を行おうとして、物事全般のアルケーを探求した。例えば水や火、無限なるものなどが、アルケーとして想定されたそうだ。彼らは、この世に起こる自然現象について( a )にかなった説明を与えようとしたと言われている。ただし、この資料の不死などの言葉に見られるように、実は初期のギリシア哲学者たちの思考のあり方は、( b )とも結び付いていた。
  • a:ノモス   b:神観念に基づいた自然観
  • a:ノモス   b:観察と経験に基づいた自然観
  • a:ロゴス   b:神観念に基づいた自然観
  • a:ロゴス   b:観察と経験に基づいた自然観
  • a:ミュトス  b:神観念に基づいた自然観
  • a:ミュトス  b:観察と経験に基づいた自然観

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この過去問の解説 (1件)

01

この問題は、ギリシアの自然哲学者たちが「アルケー(万物の根源)」をどのように捉えていたかを問うものです。

彼らは神話的な説明から脱却し、自然現象を合理的に説明しようとしたことから、哲学の始まりとされます。

ただし、完全に宗教的観念を排除したわけではなく、思考の中には神聖な存在との結び付きも見られました。

このように、理性と神聖の要素が入り混じっていた初期哲学の特徴をつかむことが大切です。

では、問題を見てみましょう。

選択肢1. a:ノモス   b:神観念に基づいた自然観

aのノモスは法や慣習を意味し、自然哲学者が自然を理性的に説明しようとする考え方とは合いません。

bの神観念に基づいた自然観は資料中の「不死」「神的」といった語句から適切です。

aが不適切なため誤りです。

選択肢2. a:ノモス   b:観察と経験に基づいた自然観

aのノモスは1番と同様に不適切です。

bの観察と経験に基づいた自然観は近代的すぎて文脈に合いません。

どちらも不適切です。

選択肢3. a:ロゴス   b:神観念に基づいた自然観

aのロゴスは理性や言葉を意味し、自然哲学者が神話に代わって自然を説明しようとした思想を表します。

bの神観念に基づいた自然観は、資料の「神的」「不死」という語句と合っています。

最も適切な組み合わせです。

選択肢4. a:ロゴス   b:観察と経験に基づいた自然観

aのロゴスは適切ですが、bの観察と経験に基づいた自然観は自然哲学の時代にはまだ成立しておらず、資料とも合いません。

部分的に正しいものの、適切とは言えません。

選択肢5. a:ミュトス  b:神観念に基づいた自然観

aのミュトスは神話を意味し、自然哲学者の理性的な説明とは真逆の考え方です。

bの神観念に基づいた自然観は資料と一致しますが、aが不適切です。

選択肢6. a:ミュトス  b:観察と経験に基づいた自然観

aのミュトスもbの観察と経験に基づいた自然観も、いずれもこの文脈には適していません。

まとめ

自然哲学者たちは、自然をロゴス(理性)によって理解しようとしながらも、同時に神的な性質をその根源に見ていた点が重要です。

理性と宗教観が混在していた初期の哲学的思考の特徴を押さえておきましょう。

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