大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問37 (倫理(第1問) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問37(倫理(第1問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

以下を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのAとBは、各々全て同じ人物である。

次の会話は、高校生Aとそのいとこの大学生Bが交わしたものである。

A:昔の思想家って、本当に色んなこと思い付きますよね。みんな天才だっていうのはよく分かるけど、色々ありすぎて、とても覚えきれないですよ。
B:おつかれさま。それじゃあ、バラバラに暗記するんじゃなくて、思想の流れを理解するようにしたらどうかな。天才って言われる人たちも、ゼロから思想を生み出したというより、a 先人の考え方を継承しつつ、批判したり再解釈することで、自分の思想を確立したっていうパターンが多いみたいだよ。
A:え、そうなんですか。例えば?
B:例えば、b 儒教の思想家たちはみんな孔子の思想を継承しているよね。
A:なるほど、それはそうか。でもじゃあ、最初の孔子は?
B:孔子もやっぱり、昔の思想を参考にしてるんだよ。そして、儒教の仁や礼の思想へのc 批判から、また別の思想が生まれてゆくんだよね。
A:本当だ、教科書にも「〇〇は✕✕を引き継いで」とか「△△を批判して」みたいな文章、たくさんありますね。読み飛ばしてたな…。これ、宗教の思想家にも当てはまりますか?
B:例えばゴータマ・ブッダは、既存の宗教のd 生命観や理想を受け継ぎながらも、それに飽き足らず、自らの道を求めたと言えるんじゃないかな。

次の会話は、AとBが交わした会話の続きである。

A:さっきの、批判して再解釈するって話ですけど、e ユダヤ教とキリスト教f イスラームって、教科書に続けて書いてありますよね。その関係も同じように考えると分かりやすいですね。
B:そうだね、歴史の流れの中に位置付けると理解しやすいね。ただし、それは一つの見方にすぎないということも覚えておいてほしいな。
A:他の見方もあるってことですか?
B:それぞれの信仰の立場から見れば違うよ。例えばユダヤ教徒は自分たちの聖書を「旧約」とは呼ばないし、ムスリムはクルアーンを聖書の再解釈ではなく、神の言葉をそのまま記したものと考えているわけだから。
A:なるほど…。そういえば、今日レポートの課題が出たんですけど、まずはテーマに関する本を読んで、先人の議論を理解した上で自分なりに批判や意見を述べるように、って言われたんです。さっきの、g 受け継ぐ、批判するって話となんだか似てますね。
B:その通りだと思う。その意味では、私たちが今やっている勉強やレポート執筆なんかも、古代から思想家たちが行ってきた営みの延長線上にあるんだと思うよ。

下線部fに関して、ムハンマドについてのイスラームの考え方として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
  • ムハンマドは、自らに言葉を伝えた神(アッラー)を唯一にして並ぶものなき存在とし、ユダヤ教やキリスト教で信仰される神の上位に置いた。
  • ムハンマドは、ユダヤ教のモーセらやキリスト教のイエスに続く預言者であるが、特に最終的な啓示を受けた最後の預言者である。
  • ムハンマドは、自らが神から受けた啓示に従って、ユダヤ教やキリスト教といった一神教の排他性を批判し、多神教との融和を図った。
  • ムハンマドは、キリスト教におけるイエスと同様に神の子としてその御業(みわざ)を代行したが、その一つがシャリーア(イスラーム法)の制定である。

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この過去問の解説 (1件)

01

この問題は、イスラームにおけるムハンマドの立場について理解しているかを問うものです。
特に、他の一神教(ユダヤ教・キリスト教)との関係や違いに注目することで、イスラーム独自の預言者観や信仰体系をつかむことがポイントです。
ムハンマドはどのような存在として見られているのか、その「位置づけ」をしっかり理解する必要があります。
では、問題を見てみましょう。

選択肢1. ムハンマドは、自らに言葉を伝えた神(アッラー)を唯一にして並ぶものなき存在とし、ユダヤ教やキリスト教で信仰される神の上位に置いた。

この選択肢では、「アッラーをユダヤ教やキリスト教の神より上位に置いた」と述べていますが、これは誤解を含んでいます。
イスラームにおけるアッラーは、ユダヤ教のヤハウェ、キリスト教の神と本質的に同一とされる唯一神です。イスラームは、他の一神教と神を共有しているという立場をとっており、「上位に置いた」とするのは不正確です。
よってこの選択肢は不適切です。

選択肢2. ムハンマドは、ユダヤ教のモーセらやキリスト教のイエスに続く預言者であるが、特に最終的な啓示を受けた最後の預言者である。

この選択肢は、ムハンマドがユダヤ教やキリスト教の預言者に連なる人物であり、「最後の預言者(封印の預言者)」とされるというイスラームの教義に即した内容になっています。
イスラームでは、ムハンマドが神から最終的な啓示を受けた存在であるとされ、それをまとめたのがクルアーンです。
この教義に基づいて、彼の教えは完成されたものであり、それ以降新たな預言者は現れないとされています。
この選択肢が正解です。

選択肢3. ムハンマドは、自らが神から受けた啓示に従って、ユダヤ教やキリスト教といった一神教の排他性を批判し、多神教との融和を図った。

この選択肢では、「多神教との融和を図った」とありますが、イスラームは徹底した一神教であり、多神教とは一線を画しています。
ムハンマドは当時のメッカで広く信仰されていた多神教的要素を明確に否定しており、偶像崇拝も厳しく禁止しました。
よって、この選択肢は事実と反しています。

選択肢4. ムハンマドは、キリスト教におけるイエスと同様に神の子としてその御業(みわざ)を代行したが、その一つがシャリーア(イスラーム法)の制定である。

この選択肢では、ムハンマドを「神の子」と表現していますが、これはキリスト教のイエスに対する考え方です。
イスラームでは、ムハンマドはあくまで「人間であり神の使徒」であって、決して神の子とはされません。
さらに、シャリーア(イスラーム法)はムハンマドの言行録(スンナ)やクルアーンに基づいて後の学者たちによって整備されたもので、ムハンマドが一人で制定したわけではありません。
よってこの選択肢も不適切です。

まとめ

ムハンマドは、イスラームにおいて「最後の預言者」とされ、神の啓示を完全な形で人々に伝えた存在と考えられています。
彼はユダヤ教やキリスト教の流れを受け継ぎながら、啓示の完成者としての地位を持っており、その立場は他の宗教と比較しても独特です。
このようなイスラームの教義理解が正解を選ぶ鍵になります。

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