大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問48 (日本史B(第3問) 問4)
問題文
B
ノリオ:中世の庶民たちは、自分たちのことをそれほど詳しく文字で記録しているわけではないよね。
セイコ:その点で、史料3は中世の村の様子を荘園領主が詳しく記録していたもので、とても貴重だよ。
ノリオ:史料1や史料2にもあったけど、飢饉が多かったことが分かるね。
セイコ:村人の食糧を確保するのも困難な時代だったんだね。たびたび起こる飢饉の中で、村人たちはどうやって生き延びていたのかな。
ノリオ:c 中世の厳しい社会のなかで育まれた文化や生業に目を配ることも、中世の法を理解する上では重要だよね。
次の史料3は、荘園領主の九条政基が、和泉国日根野(ひねの)荘の現地に下向して直接経営にあたった時の日記の一部である。史料3について述べた文として正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
史料3
地下より申して云く、「去年、不熟(注1)の故、御百姓等、繁多(はんた)餓死し了(おわ)んぬ。よって蕨(わらび)を掘りて存命せしむるのところ、件(くだん)の蕨、(中略)去る夜、盗み取る者あり。追い懸くるのところ、(中略)母も子も三人とも、もって殺害し了んぬ。盗人の故也」と云々。(中略)地下沙汰の次第、証人一人も生かし置かず、母まで殺害するは、甚だ乱吹(らんすい)(注2)か。但し悪行の儀は、連々風聞(注3)の条、地下沙汰人すでにかくの如き沙汰の由、注進(注4)の上は、無人の時分(注5)是非に及ばず。盗人たるにおいては、これまた自業の致す所也。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
(『政基公旅引付』文亀4(1504)年2月16日条)
(注1)不熟:作物の出来が悪いこと。
(注2)乱吹:乱暴。
(注3)風聞:噂。
(注4)注進:報告すること。
(注5)無人の時分:ここでは「犯人や関係者がすべて殺害されてしまった今となっては」という意味。
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問48(日本史B(第3問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
B
ノリオ:中世の庶民たちは、自分たちのことをそれほど詳しく文字で記録しているわけではないよね。
セイコ:その点で、史料3は中世の村の様子を荘園領主が詳しく記録していたもので、とても貴重だよ。
ノリオ:史料1や史料2にもあったけど、飢饉が多かったことが分かるね。
セイコ:村人の食糧を確保するのも困難な時代だったんだね。たびたび起こる飢饉の中で、村人たちはどうやって生き延びていたのかな。
ノリオ:c 中世の厳しい社会のなかで育まれた文化や生業に目を配ることも、中世の法を理解する上では重要だよね。
次の史料3は、荘園領主の九条政基が、和泉国日根野(ひねの)荘の現地に下向して直接経営にあたった時の日記の一部である。史料3について述べた文として正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
史料3
地下より申して云く、「去年、不熟(注1)の故、御百姓等、繁多(はんた)餓死し了(おわ)んぬ。よって蕨(わらび)を掘りて存命せしむるのところ、件(くだん)の蕨、(中略)去る夜、盗み取る者あり。追い懸くるのところ、(中略)母も子も三人とも、もって殺害し了んぬ。盗人の故也」と云々。(中略)地下沙汰の次第、証人一人も生かし置かず、母まで殺害するは、甚だ乱吹(らんすい)(注2)か。但し悪行の儀は、連々風聞(注3)の条、地下沙汰人すでにかくの如き沙汰の由、注進(注4)の上は、無人の時分(注5)是非に及ばず。盗人たるにおいては、これまた自業の致す所也。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。
(『政基公旅引付』文亀4(1504)年2月16日条)
(注1)不熟:作物の出来が悪いこと。
(注2)乱吹:乱暴。
(注3)風聞:噂。
(注4)注進:報告すること。
(注5)無人の時分:ここでは「犯人や関係者がすべて殺害されてしまった今となっては」という意味。
- 村は、村人の食糧となる蕨を自主的に備蓄する地下請を行っている。
- 犯人を含む母子の殺害は、自検断による取り締まりの結果である。
- 村人らは念仏を唱え、自分たちが処刑した犯人らの往生を祈っている。
- 沙汰人らは寄合を開き、飢饉が早く終息するよう祭礼を行っている。
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この過去問の解説 (1件)
01
【史料3の内容】
・去年、不作(不熟)のため、多くの百姓が餓死した。
・生き延びるために、蕨(わらび)を掘って食べていた。
・その蕨を盗んだ者が出た → 追いかけられた。
・結局、盗んだ者+その母+その子供、三人とも殺害されてしまった。
・地下(じげ=村人)による取り締まり(地下沙汰)で、犯人も関係者も全員殺害され、証人も残らなかった。
・「盗みは悪いが、こうした暴力は乱暴でよくない」とも言っている。
・それでも最後には「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えている。
備蓄の話は出ていないため、誤りです。
「地下沙汰」とは、村人たちが自分たちで裁いた(=自検断)ことであり、【正解】です。
「南無阿弥陀仏」と唱えているのは、記録を書いている九条政基の心情表現で、村人たちが念仏を唱えたとは書いていないため誤りです。
寄合や祭礼の話は一切出ていないため、誤りです。
この史料は、室町時代後期の農村社会で、飢饉による深刻な混乱と、村人による自力救済(自検断)が行われていたことを示しています。
このような暴力的な取り締まりは、中世の村社会では珍しくなかった現象です。
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