中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問160 (経営法務 問24)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問160(経営法務 問24) (訂正依頼・報告はこちら)

民法上の不法行為に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 慰謝料請求権は、身体または自由が侵害された場合には認められるが、財産権または名誉が侵害された場合には認められない。
  • 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、使用者が当該第三者に対して使用者責任を負うときは、被用者は当該第三者に対して不法行為責任を負わない。
  • 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告を要することなく、当然に遅滞に陥る。
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。

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この過去問の解説 (2件)

01

民法上の不法行為に関する問題です。

選択肢1. 慰謝料請求権は、身体または自由が侵害された場合には認められるが、財産権または名誉が侵害された場合には認められない。

慰謝料請求権は、財産権または名誉が侵害された場合にも認められます

 

例えば、SNSなどで虚偽の情報を流布されて名誉を傷付けられた場合、慰謝料を請求することができるため不適切な選択肢です。

 

選択肢2. 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、使用者が当該第三者に対して使用者責任を負うときは、被用者は当該第三者に対して不法行為責任を負わない。

被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、使用者が当該第三者に対して使用者責任を負うときでも、被用者は当該第三者に対して不法行為責任を負います

 

使用者が当該第三者に対して賠償を行なったとしても、当該第三者は被用者に対して損害賠償責任を問うことができるため不適切な選択肢です。(使用者が使用者責任を果たしたとしても、被用者の不法行為責任が免除されるわけではありません)

 

なお、被用者とは「雇われている人」という意味で、被雇用者と同じ意味です。

選択肢3. 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告を要することなく、当然に遅滞に陥る。

不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告を要することなく当然に遅滞に陥ることは民法上の不法行為に関する記述として最も適切です。

 

不法行為が発生した時点で損害賠償請求権が発生し、遅延損害金の起算点となります。その後、損害賠償請求がなされるまでの間にはタイムラグがあり当然に遅滞しているため正解の選択肢となります。

選択肢4. 不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。

不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときは時効によって消滅します。

 

したがって、不適切な選択肢です。

 

まとめ

【補足】

 

消滅時効には2種類あり、本問の選択肢で問われている「不法行為に基づく~」は客観的起算点といいます。

 

もう1つは主観的起算点といい、「被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時」から5年間行使しないときは、時効によって消滅します。

 

「平成の大改正」と呼ばれる改正民法(平成29年5月成立)により契約ルールが大幅に改正され、消滅時効の論点は過去問題でも出題があることから今後もしばらく出題され続けると思われます。

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02

本問は、民法上の不法行為責任に関する基本的な理解を問う問題です。不法行為責任とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者が負う損害賠償責任のことです。企業活動においても、製造物責任や使用者責任など様々な局面で問題となりうる重要な法的概念です。

選択肢1. 慰謝料請求権は、身体または自由が侵害された場合には認められるが、財産権または名誉が侵害された場合には認められない。

この選択肢は誤りです。民法第710条では、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と規定しています。

つまり、慰謝料請求権(精神的損害に対する賠償請求権)は、身体や自由が侵害された場合だけでなく、財産権や名誉が侵害された場合にも認められます。例えば、SNSでの誹謗中傷による名誉毀損や、著作権などの財産権侵害の場合にも、精神的損害が生じていれば慰謝料請求が可能です。

選択肢2. 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加えた場合において、使用者が当該第三者に対して使用者責任を負うときは、被用者は当該第三者に対して不法行為責任を負わない。

この選択肢は誤りです。被用者(従業員)が使用者(雇用主)の事業の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者は民法第715条に基づいて「使用者責任」を負いますが、これによって被用者自身の不法行為責任が消滅するわけではありません。

被用者は自らの不法行為について民法第709条に基づく不法行為責任を負い、使用者は第715条に基づく使用者責任を負います。つまり、被害者である第三者は、被用者と使用者の両方に対して損害賠償を請求することができます(ただし、二重取りはできません)。

使用者が被害者に対して損害賠償をした場合、使用者は被用者に対して求償権を行使することができますが、被用者に故意または重大な過失がない場合には、裁判所はその求償額を減額することができます(民法第715条第3項)。

選択肢3. 不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告を要することなく、当然に遅滞に陥る。

この選択肢は正しいです。民法第412条では、「債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」と規定しています。不法行為に基づく損害賠償債務は、不法行為時に発生し、その時点で履行期が到来していると解されています。

したがって、不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者による催告(履行の請求)を要することなく、不法行為時から当然に遅滞に陥ります。これにより、不法行為の時点から遅延損害金が発生することになります。

この原則は、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合と異なります。債務不履行の場合は、原則として債権者の催告が必要とされています(期限の定めのない債務の場合)。

選択肢4. 不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。

この選択肢は誤りです。改正民法(令和2年4月1日施行)では、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効について、次のように規定しています。

「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」から5年間行使しないとき(主観的起算点、民法第724条第1号)

「不法行為の時」から20年間行使しないとき(客観的起算点、民法第724条第2号)

したがって、不法行為の時から10年ではなく、20年経過すると時効により消滅します。この20年の期間は、改正前の民法でも同様でしたが、改正前は「除斥期間」と解されていたのに対し、改正後は「時効期間」として明確化されました。

まとめ

本問の正解は選択肢3です。

不法行為法は、他人に損害を与えた場合の法的責任を定めるもので、事業活動においても重要な法的知識となります。主なポイントは以下の通りです。

慰謝料請求権は、身体・自由の侵害だけでなく、財産権・名誉の侵害の場合にも認められます。

使用者責任が生じる場合でも、被用者自身の不法行為責任は消滅しません。

不法行為に基づく損害賠償債務は、催告なしに当然に遅滞に陥ります。

不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知ってから5年、または不法行為の時から20年で時効消滅します。

特に使用者責任については、企業経営において重要な論点となります。従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、企業も責任を負うことになるため、適切なリスク管理や従業員教育が必要となります。

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