中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問153 (経営法務 問17)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問153(経営法務 問17) (訂正依頼・報告はこちら)

特許法上の職務発明に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • 従業者がした職務発明についての特許を受ける権利は、契約、勤務規則などにおいて特に定めがなければ、その発生時から使用者に原始的に帰属する。
  • 従業者がした発明は、その性質上使用者の業務範囲に属する発明であれば、特許法上の「職務発明」に該当する。
  • 従業者は、職務発明について使用者に特許を受ける権利を取得させた場合には、特許法の規定により相当の利益を受ける権利を有するところ、この相当の利益は金銭で直接支払われる必要があり、ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない。
  • 職務発明については、特許法の明文の規定に基づき、契約、勤務規則その他の定めに基づいて相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項について、指針(ガイドライン)が公表されている。

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この過去問の解説 (2件)

01

特許法上の職務発明に関する問題です。

 

職務発明は頻出論点ですが、本問では込み入った内容が問われている選択肢があり難易度は高めです。

選択肢1. 従業者がした職務発明についての特許を受ける権利は、契約、勤務規則などにおいて特に定めがなければ、その発生時から使用者に原始的に帰属する。

従業者がした職務発明についての特許を受ける権利は、契約、勤務規則などにおいて特に定めがなければ、その発生時から従業者に原始的に帰属します。

 

特許を受ける権利を使用者に帰属させたい場合は、契約、勤務規則などにおいて定める必要があるため不適切な選択肢です。

選択肢2. 従業者がした発明は、その性質上使用者の業務範囲に属する発明であれば、特許法上の「職務発明」に該当する。

「従業者がした発明」には、以下の3つがあります。

・自由発明:使用者の業務範囲に属しない発明(従業者が業務時間外などにした、業務範囲に含まれない発明)
業務発明:使用者の業務範囲に属する発明で、職務発明を除いた発明
職務発明:その性質上使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明

 

以上から、使用者の業務範囲に属する発明には業務発明も含まれ、職務発明のみではないため不適切な選択肢です。

選択肢3. 従業者は、職務発明について使用者に特許を受ける権利を取得させた場合には、特許法の規定により相当の利益を受ける権利を有するところ、この相当の利益は金銭で直接支払われる必要があり、ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない。

従業者は、職務発明について使用者に特許を受ける権利を取得させた場合には、特許法の規定により金銭やストックオプションの付与により相当の利益を受けることができます

 

相当の利益を受ける権利には、金銭以外にも様々な待遇やインセンティブが含まれるため不適切な選択肢です。

 

※様々な待遇やインセンティブの具体例については、他の選択肢で述べているガイドラインにも記載があります。

選択肢4. 職務発明については、特許法の明文の規定に基づき、契約、勤務規則その他の定めに基づいて相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項について、指針(ガイドライン)が公表されている。

職務発明については、特許法の明文の規定に基づき、契約、勤務規則その他の定めに基づいて相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項について指針(ガイドライン)が公表されていることは、特許法上の職務発明に関する記述として最も適切であるため正解の選択肢となります。

 

ガイドラインについては、下記、経済産業省のホームページでご確認ください。

(出所:経済産業省「特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)」https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/shokumu_guideline.html

 

※ガイドラインの詳細を暗記する必要はなく、過去問題で問われた内容を確認する程度で構いません。

まとめ

【補足】

 

職務発明は頻出論点であり、過去問題での出題も複数回あります。

 

本問で問われている内容では、特許を受ける権利を使用者に帰属させる要件、相当の利益を受ける権利の内容については覚えておく必要があります。

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02

本問は特許法第35条に規定されている職務発明制度に関する問題です。職務発明とは、従業者がその職務として行った発明で、使用者の業務範囲に属するものをいいます。職務発明制度は、従業者の権利保護と企業の研究開発活動の促進という二つの側面のバランスをとることを目的としており、実務上も重要な制度です。

選択肢1. 従業者がした職務発明についての特許を受ける権利は、契約、勤務規則などにおいて特に定めがなければ、その発生時から使用者に原始的に帰属する。

この選択肢は誤りです。特許法第35条第3項では、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者等に帰属するとされています。

しかし、「契約、勤務規則などにおいて特に定めがなければ」という場合、特許を受ける権利は従業者に原始的に帰属します。選択肢では「使用者に原始的に帰属する」となっており、これは誤りです。

選択肢2. 従業者がした発明は、その性質上使用者の業務範囲に属する発明であれば、特許法上の「職務発明」に該当する。

この選択肢も誤りです。特許法第35条第1項によれば、職務発明の要件は以下の2つです。

その性質上使用者等の業務範囲に属する発明であること

その発明をするに至った行為が従業者等の現在または過去の職務に属すること

つまり、「使用者の業務範囲に属する発明」だけでは職務発明の要件を満たさず、「発明をするに至った行為が職務に属すること」という要件も必要です。選択肢2ではこの後者の要件について触れられていないため、不適切です。

選択肢3. 従業者は、職務発明について使用者に特許を受ける権利を取得させた場合には、特許法の規定により相当の利益を受ける権利を有するところ、この相当の利益は金銭で直接支払われる必要があり、ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない。

この選択肢も誤りです。特許法第35条第4項では、従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させた場合には、相当の利益を受ける権利を有するとされています。

この「相当の利益」は、必ずしも金銭で直接支払われる必要はなく、特許庁が公表しているガイドラインでは、金銭以外にも、昇進や特別休暇の付与、ストックオプションの付与なども相当の利益に含まれるとされています。したがって、「ストックオプションの付与により相当の利益を与えることはできない」という記述は誤りです。

選択肢4. 職務発明については、特許法の明文の規定に基づき、契約、勤務規則その他の定めに基づいて相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項について、指針(ガイドライン)が公表されている。

この選択肢は正しいです。特許法第35条第6項では、「経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、相当の利益の内容を決定するための手続、相当の利益の内容の決定に係る不合理性の判断に関して考慮すべき使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、相当の利益の内容の開示の状況その他の事項に関する手続に関する指針を定めて公表するものとする」と規定されています。

これに基づき、経済産業省は「特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)」を公表しており、相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項が示されています。このガイドラインは職務発明制度の運用において重要な役割を果たしています。

まとめ

本問の正解は選択肢4です。

職務発明制度は平成27年(2015年)に大きく改正され、契約等で定めることにより、職務発明に係る特許を受ける権利を発生時から使用者に帰属させることが可能になりました(特許法第35条第3項)。ただし、契約等で特に定めがない場合は、従来通り従業者に原始的に帰属します。

また、従業者は、職務発明について特許を受ける権利等を使用者に取得させた場合には、相当の利益を受ける権利を有します(同条第4項)。この相当の利益は金銭だけでなく、昇進やストックオプションの付与などの様々な形態があり得ます。

さらに、相当の利益を与えることの不合理性の判断に関する考慮事項については、特許法第35条第6項に基づき、経済産業大臣が指針(ガイドライン)を定めて公表しています。このガイドラインには、相当の利益の決定手続きや、不合理性の判断基準などが示されており、実務上参考にされています。

職務発明制度は、発明者である従業者の権利を保護しつつ、企業の研究開発活動を促進するという二つの側面のバランスを取る重要な制度であり、中小企業においても研究開発を行う上で理解しておくべき制度です。

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