中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問152 (経営法務 問16)
問題文
工業所有権の保護に関するパリ条約に関する記述として、最も適切なものはどれか。
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問題
中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問152(経営法務 問16) (訂正依頼・報告はこちら)
工業所有権の保護に関するパリ条約に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- 同盟国の間で締結された多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められることが、パリ条約に規定されている。
- 同盟に属しない国の国民は、いずれかの同盟国の領域内に住所または現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する場合であっても、同盟国の国民とはみなされない。
- パリ条約は、原産地表示を保護対象として掲げていない。
- 優先権主張の優先期間は、意匠および商標については、特許および実用新案と同様、12カ月であることがパリ条約に規定されている。
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この過去問の解説 (2件)
01
工業所有権の保護に関するパリ条約(以下、単にパリ条約と表記)に関する問題です。
パリ条約では、「内国民待遇の原則」「優先権制度」「各国工業所有権独立の原則(特許、商標)」の3大原則が定められています。以下に整理します。
・内国民待遇の原則
パリ条約に加盟する他国の国民と自国民は、すべての加盟国内の工業所有権の保護に関する権利や利益を保証されます。また、加盟国が他国民に権利や利益を保証する際、当該加盟国内に住所または営業所があることを条件としてはならないとされています。
更に、パリ条約第3条では、同盟に属していない国の国民であっても、同盟国の領域内に住所や営業所を有する場合は同盟国の国民とみなすと規定しています。
・優先権制度
加盟国が、他の加盟国のどこか1国に特許や実用新案、意匠、あるいは商標を正規に出願すれば、一定期間中は他の加盟国に対して優先権を有します。優先権を主張できる期間は、特許と実用新案については12ヵ月、意匠と商標については6ヵ月とされます。
・各国工業所有権独立の原則(特許、商標)
特許の審査は各加盟国で独自に行われ、特許の消滅や無効についても、他国で消滅・無効となったという理由で自国の特許を消滅・無効にしてはならない(各加盟国が独自に判断する)ことになっています。
商標についても同様で、ある加盟国に出願された商標が、本国で登録出願されていない、あるいは登録や存続期間の更新がされていないことを理由として拒否・無効とされてはならないことになっています。
また、パリ条約では工業所有権の保護対象を特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示又は原産地名称及び不正競争の防止としています。
冒頭の解説より、同盟国の間で締結された多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められることがパリ条約に規定されていることは、パリ条約に関する記述として最も適切です。
したがって、正解の選択肢となります。
冒頭の解説(パリ条第約3条)より、同盟に属しない国の国民も、いずれかの同盟国の領域内に住所または現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する場合は、同盟国の国民とみなされます。
したがって、不適切な選択肢です。
冒頭の解説より、パリ条約では原産地表示を保護対象として掲げています。
したがって、不適切な選択肢です。
冒頭の解説より、意匠および商標の優先権主張の優先期間は、6カ月であることがパリ条約に規定されています。
特許および実用新案の優先権主張の優先期間は12カ月であるため、不適切な選択肢です。
【補足】
本問では、込み入った内容が問われている選択肢があるものの、優先権制度や優先権主張の優先期間といったオーソドックスな論点から選択肢を絞り込み、消去法で正答にたどり着くことは可能です。
パリ条約は過去に何度か出題されており、少なくとも3大原則はしっかり押さえておく必要があります。
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02
本問はパリ条約に関する基本的な知識を問う問題です。パリ条約は1883年に締結された歴史ある条約で、知的財産権の国際的保護のための基本的な枠組みを定めています。特に「内国民待遇の原則」「優先権制度」「各国工業所有権独立の原則」の3つが重要な原則とされています。
この選択肢は正しいです。パリ条約第4条A(2)では、「同盟国の間で締結された多数国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められる」と規定されています。
これは、例えば特許協力条約(PCT)に基づく国際出願や、マドリッド協定に基づく国際商標登録出願なども優先権を生じさせることを意味しています。この規定により、複数国にまたがる出願手続きが簡略化され、出願人の負担が軽減されています。
この選択肢は誤りです。パリ条約第3条では、「同盟に属しない国の国民であっても、いずれかの同盟国の領域内に住所または現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する者は、同盟国の国民と同一の待遇を受ける」と規定しています。
つまり、パリ条約の非加盟国の国民であっても、加盟国内に住所や営業所があれば、パリ条約の保護を受けることができます。これは、内国民待遇の原則を広げ、国際的な知的財産保護を促進するための規定です。
この選択肢は誤りです。パリ条約第1条(2)では、工業所有権の保護対象として「特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示または原産地名称及び不正競争の防止」を明示的に掲げています。
原産地表示は、製品の地理的な出所を示すものであり、例えば「メイド・イン・ジャパン」のような表示や、特定地域の特産品であることを示す表示などが該当します。これらの保護もパリ条約の目的の一つとなっています。
この選択肢は誤りです。パリ条約第4条C(1)では、優先権主張の優先期間について、「特許および実用新案については12か月、意匠および商標については6か月」と規定しています。
優先権とは、ある国で最初に出願した日から一定期間内であれば、他の加盟国に出願する際にも最初の出願日が基準日として認められる制度です。特許と実用新案については技術的な評価に時間がかかることから12か月と長く設定されていますが、意匠と商標については6か月と短くなっています。
本問の正解は選択肢1です。
パリ条約は国際的な知的財産保護の基礎となる条約であり、主に以下の3つの重要原則を定めています。
内国民待遇の原則:各同盟国は、他の同盟国の国民に対し自国民と同等の保護を与えなければならない。
優先権制度:ある同盟国での最初の出願日から一定期間内であれば、他の同盟国への出願も最初の出願日が基準となる。
各国工業所有権独立の原則:各国の特許や商標などは、他国でのそれらの運命に左右されない。
また、パリ条約では保護対象として特許、実用新案、意匠、商標だけでなく、原産地表示なども明示的に掲げています。優先権の期間については、特許・実用新案は12か月、意匠・商標は6か月と区別されています。
企業の国際展開が進む現代においては、こうした国際的な知的財産保護の仕組みを理解しておくことは、企業の知的財産戦略を考える上で不可欠です。
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