中小企業診断士 過去問
令和6年度(2024年)
問10 (経済学・経済政策 問10)

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問題

中小企業診断士試験 令和6年度(2024年) 問10(経済学・経済政策 問10) (訂正依頼・報告はこちら)

下図によって、完全資本移動かつ小国のマンデル=フレミング・モデルを考える。政府支出拡大の効果に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

a  この国が為替レートを維持しようとするならば、政府支出の拡大は、為替レート維持のための自国通貨の売り介入に伴う貨幣供給の増加と相まって、自国のGDPを増加させることができる。
b  この国が為替レートを維持しようとするならば、政府支出を拡大させても、為替レート維持のための自国通貨の買い介入に伴う貨幣供給の減少と相まって、自国のGDPを減少させてしまう。
c  この国が為替レートの変動を市場に任せるとき、政府支出を拡大させても、その効果は資本流入の増加による自国通貨高によって完全なクラウディング・アウトが生じ、自国のGDPは増加しない。
d  この国が為替レートの変動を市場に任せるとき、政府支出の拡大は、為替レートを減価させ、自国のGDPを増加させる。
問題文の画像
  • aとc
  • aとd
  • bとc
  • bとd

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この過去問の解説 (2件)

01

マンデル=フレミング・モデルとは、小国開放経済における財政政策と金融政策の効果を分析する経済モデルです。

 

各選択肢をそれぞれ解説します。

 

a

為替レートを維持しようとするとは、固定相場ということになります。

固定相場での政府支出の拡大(財政政策)には、GDPを増加させる効果が見込めるため、本選択肢は正しいです。

 

b

本選択肢も固定相場が前提となります。

固定相場で政府支出を拡大させると、GDPを増加させるため、本選択肢は誤っています。

 

c

為替レートの変動を市場に任せるとは変動相場と判断できます。

変動相場における政府支出の拡大には、GDPを増加させる効果は見込めないため、本選択肢は正しいです。

 

d

本選択肢も変動相場が前提となります。

変動相場での政府支出の拡大には、GDPを増加させる効果は見込めないため、本選択肢は誤っています。

 

正しい選択肢の組み合わせは、 aとc です。

選択肢1. aとc

本選択肢が正解です。

選択肢2. aとd

本選択肢は不正解です。

選択肢3. bとc

本選択肢は不正解です。

選択肢4. bとd

本選択肢は不正解です。

まとめ

GDPを増加させる効果のあるなしを簡単にまとめると以下のようになります。

 

固定相場では財政政策がGDP増加に効果があります。

変動相場では金融政策にGDP増加に効果があります。

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02

マンデル=フレミング・モデルに関する問題です。

 

BP曲線(GDPと利子率の組み合わせを示す曲線)が水平であり、与件文に明記されていますが完全資本移動であることが確認できます。(資本移動がない場合は、BP曲線は垂直になります)  

また、為替レートが縦軸、自国のGDPが横軸であることも一緒に確認しておきましょう。

 

解答群a~dで述べられている用語について確認します。

・政府支出の拡大または縮小→IS曲線がシフトします。

・貨幣供給の増加または減少→LM曲線がシフトします。

・為替レートを維持しようとする→BP曲線が硬直的(IS曲線とLM曲線が交わっている、均衡状態を維持しようとする)

※為替レートの変動を市場に任せる場合は、IS曲線とLM曲線は交わりません。

・クラウディング・アウト→政府支出が利子率の上昇を招き、結果的にGDPの増加を妨げてしまうことです。詳細は以下解答群dの解説をご参照ください。

 

以下、誤りの解答群のみ解説します。

b.この国が為替レートを維持しようとするならば、政府支出を拡大させても、為替レート維持のための自国通貨の買い介入に伴う貨幣供給の減少と相まって、自国のGDPを減少させてしまう。

→この国が為替レートを維持しようとするならば、政府支出を拡大させると、為替レート維持のための自国通貨の買い介入に伴う貨幣供給の増加と相まって、自国のGDPが拡大します。

 

為替レートを維持しようとするということは、「BP曲線を均衡させようとする」ということです。すなわち、①政府支出を拡大させる(IS曲線が右シフトする)と②利子率が上がる(縦軸が上方にシフトする)ため、③貨幣供給を増加させる(LM曲線が右シフト)ことで④利子率を下げてBP曲線を均衡させようとします。

 

結果、以下の図のように⑤GDPは増加(横軸が右シフト)します。(解答群aが正解となります)

d.この国が為替レートの変動を市場に任せるとき、政府支出の拡大は、為替レートを減価させ、自国のGDPを増加させる。

→この国が為替レートの変動を市場に任せるとき、政府支出の拡大は、為替レートを増価させ、自国のGDPは変わりません

 

為替レートの変動を「市場に任せる」ということは、「BP曲線を均衡させようとはしない」ということです。すなわち、①政府支出を拡大させる(IS曲線が右シフトする)と②利子率が上がる(縦軸が上方にシフトする)ため、為替レートは増価します。

 

ただし、為替レートの変動を「市場に任せる」ためLM曲線は右シフトしません。(貨幣供給を増加させることでBP曲線を均衡させようとはしません) 為替レートは増価したままなので自国の通貨高(例えば円高ドル安)の状態となっており、海外から資本が流入して一時的に③GDPは増加します。

 

円高ドル安なので、輸入が増加し輸出が減少します。輸入の増加により政府支出を拡大させる(IS曲線右シフト)効果が打ち消されてしまうことで④IS曲線は左シフトしてしまい、一旦増加していた自国のGDPも元に戻ります。(結果、以下の図のように⑤GDPは変わらないため解答群cが正解となります) この現象のことを、クラウディング・アウト(解答群c)といいます。

選択肢1. aとc

冒頭の解説より、「aとc」の組み合わせであるため正解の選択肢となります。

選択肢2. aとd

冒頭の解説より、「aとc」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢3. bとc

冒頭の解説より、「aとc」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

選択肢4. bとd

冒頭の解説より、「ac」の組み合わせであるため不適切な選択肢です。

まとめ

【補足】

 

本問ではグラフが与えられているので、マンデル=フレミング・モデルを理解できている人でも必ず手を動かし、きちんとグラフで動きを確認して正誤判断しましょう。(グラフがなく文章だけで正誤判断しなければならない場合もあるため、視覚化して正誤判断することは必須です)

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