司法書士 過去問
令和5年度
問61 (午後の部 問26)

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問題

司法書士試験 令和5年度 問61(午後の部 問26) (訂正依頼・報告はこちら)

書面を提出する方法によって不動産登記の申請をする場合における添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付の請求に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
なお、申請人はいずれも自然人とする。

ア  相続を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、申請人の住所の記載のある相続関係説明図を添付したときは、申請人の住所を証する書面について原本と相違ない旨の記載のある謄本の提供を要することなく、当該申請人の住所を証する書面の原本の還付を請求することができる。
イ  売買を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、登記義務者が登記識別情報を提供することができないため資格者代理人が作成した本人確認情報を添付したときは、当該本人確認情報に添付する資格者代理人であることを証する書面について原本の還付を請求することができる。
ウ  時効取得を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、当該申請のために登記権利者及び登記義務者が作成した登記の原因となる事実又は法律行為を登記所に報告する形式の登記原因を証する情報を添付したときは、当該登記原因を証する情報について原本の還付を請求することはできない。
エ  売買予約を原因とする所有権の移転請求権の仮登記を申請する場合において、登記権利者が、登記義務者の承諾書を添付して単独で当該仮登記の申請をしたときは、当該承諾書に添付された登記義務者の印鑑に関する証明書について原本の還付を請求することはできない。
オ  申請人が登記の申請をするとともに添付書面について原本の還付を請求した場合において、当該請求に係る添付書面の原本の還付を請求することができるときは、登記官は、当該申請の受付後、直ちに原本の還付をしなければならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (2件)

01

不動産登記法(添付書面の原本還付)に関する問題です。原本還付に関する基本的なルールを覚えていれば、解ける問題です。

選択肢2. アオ

(ア)添付書面の原本還付を申請する場合には、申請人は、原本と相違なき旨を記載した謄本の提出が必要です。ただし、相続を登記原因とする所有権移転の登記の申請において、相続関係説明図を提供したときは、登記原因を証する情報である戸籍謄本や抄本等については、相続関係説明図をこれらの書面の写しとすることができますので、原本還付を申請するにあたり、原本と相違なき旨を記載した謄本の提出は不要です。一方、申請人である相続人の住所証明書は、相続を証する情報とは言えないので、原則どおり、原本還付を受けるためには、原本と相違なき旨を記載した謄本の提出が必要です。従って、本肢は誤りです。

(イ)申請代理人である司法書士が本人確認情報を提供して書面で登記の申請を行う場合には、本人確認情報の作成者の資格を証する情報として、当該司法書士が所属する司法書士会が発行した職印に関する証明書を提供しなくてはなりません。この職印に関する証明書は、原本還付を請求することができます。従って、本肢は正しいです。

(ウ)時効を登記原因とする所有権移転登記申請に関する報告式の登記原因証明情報は、当該申請のためにのみ作成された書面なので、原本還付を請求することができません。従って、本肢は正しいです。

(エ)仮登記の申請は、仮登記の登記義務者の作成に係る承諾書を添付して、仮登記の登記権利者が単独で申請できます。当該承諾書に添付された仮登記の登記義務者の印鑑証明書は、不動産登記規則19条2項の規定により添付するものであるから、不動産登記規則55条1項但書きの規定により、原本還付を請求できません。従って、本肢は正しいです。

(オ)不動産登記規則55条第3項は「登記官は、第1項の請求(原本還付の請求)があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本還付を請求しなければならない」と規定しています。本肢は、受け付け後に直ちに原本還付をしなければならないとしているため、誤りです。

まとめ

原本還付の大まかなルールは、その登記申請のためのみに使われる添付書面(委任状がその代表)は原本還付をすることができません。一方で、その登記申請のほか、別の手続きでも使用できる書面は原本還付ができる、というものです。

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02

登記申請時の原本還付に関する問題です。

実務上は大切な論点ですが、文章ではなかなかイメージが掴みにくいので、具体例を考えながら覚えていきましょう。

選択肢2. アオ

(ア)相続を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、申請人の住所の記載のある相続関係説明図を添付したときは、申請人の住所を証する書面について原本と相違ない旨の記載のある謄本の提供を要することなく、当該申請人の住所を証する書面の原本の還付を請求することができる。

 

相続登記では、相続の状態によって、膨大な量の戸籍謄本等を添付しなければならない場合があります。

この場合に、戸籍謄本等の原本還付処理の手間を省くため、実務上、以下のような取扱いがなされています。

『相続による権利の移転の登記等における添付書面の原本の還付を請求する場合において、いわゆる相続関係説明図が提出されたときは、登記原因証明情報のうち、戸籍謄本又は抄本及び除籍謄本に限り、当該相続関係説明図をこれらの書面の謄本として取り扱って差し支えない(平成17.2.25民二第457号通達)』

要するに、「相続関係説明図を添付すれば、それを戸籍謄本等の謄本(コピー)とみなして、原本還付をしてくれる」ということです。

しかし、これは登記原因証明情報に関する特例であり、本肢で問われている住所証明情報は、原則通り、原本還付処理をしなければなりません

よって、本肢は誤りです。

 

 

(イ)売買を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、登記義務者が登記識別情報を提供することができないため資格者代理人が作成した本人確認情報を添付したときは、当該本人確認情報に添付する資格者代理人であることを証する書面について原本の還付を請求することができる。

 

登記識別情報を提出できない場合に資格者代理人(=司法書士)が作成する本人確認情報には、資格者代理人(=司法書士)の資格証明書(司法書士会が発行する職印証明書)を添付しなければなりません(不登規則72条3項)。

そして、この職印証明書は、原本還付をすることができます。

よって、本肢は正しいです。

 

 

(ウ)時効取得を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合において、当該申請のために登記権利者及び登記義務者が作成した登記の原因となる事実又は法律行為を登記所に報告する形式の登記原因を証する情報を添付したときは、当該登記原因を証する情報について原本の還付を請求することはできない。

 

報告形式の登記原因証明情報は、登記申請のためだけに作られる書類なので、原本還付できません

よって、本肢は正しいです。

 

 

(エ)売買予約を原因とする所有権の移転請求権の仮登記を申請する場合において、登記権利者が、登記義務者の承諾書を添付して単独で当該仮登記の申請をしたときは、当該承諾書に添付された登記義務者の印鑑に関する証明書について原本の還付を請求することはできない。

 

承諾を証する書面に添付する印鑑証明書については、原本還付できません(不登令19条2項、不登規則55条1項但書)。

よって、本肢は正しいです。

 

 

(オ)申請人が登記の申請をするとともに添付書面について原本の還付を請求した場合において、当該請求に係る添付書面の原本の還付を請求することができるときは、登記官は、当該申請の受付後、直ちに原本の還付をしなければならない。

 

不動産登記規則第55条第3項には、「登記官は、第一項本文の規定による請求(=原本還付の請求)があった場合には、調査完了後、当該請求に係る書面の原本を還付しなければならない。」と規定されています。

よって、受付後直ちに還付されるとしている本肢は誤りです。

 

なお、登記の処理は、受付→調査→記入の順で行われます。

実務上、調査完了後に原本を還付してもらうケースはほとんどなく、登記手続がすべて完了するときに還付されることがほとんどです。

まとめ

相続関係説明図を添付することで省略できるのは、あくまで登記原因証明情報となる戸籍謄本等(=相続関係を示すための戸籍謄本等)に限られることに注意しましょう。

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