司法書士 過去問
令和5年度
問54 (午後の部 問19)

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問題

司法書士試験 令和5年度 問54(午後の部 問19) (訂正依頼・報告はこちら)

時効取得を登記原因とする所有権の移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を占有していたが、甲土地の取得時効の完成前に死亡し、Aの相続人であるCが甲土地の占有を継続して甲土地を時効により取得した場合において、Cが当該時効の起算日より後に出生したときであっても、Cは、時効取得を登記原因として、当該時効の起算日の日付を登記原因の日付とする所有権の移転の登記を申請することができる。
イ  Aは、B及びCが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、Bが共有者全員持分全部移転の登記に協力しない場合には、Aは、Cと共同して時効取得を登記原因としてCの持分の移転の登記を申請することはできない。
ウ  Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、その時効の起算日より前にBが死亡していた場合には、Aは、甲土地について相続を登記原因とする所有権の移転の登記をすることなく、Bの相続人全員と共同してBからAへの所有権の移転の登記を申請することはできない。
エ  Aは、時効の起算日より後にBが死亡し、Bの相続人であるCに相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされている甲土地を時効により取得した場合には、Cへの所有権の移転の登記を抹消した上で、Aは、Bの相続人全員と共同して所有権の移転の登記を申請しなければならない。
オ  Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、その後に、BがCに対し、甲土地を贈与しており、贈与を登記原因とするBからCへの所有権の移転の登記がされている場合には、Aは、Cと共同して時効取得を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

不動産登記法(時効取得を登記原因とする登記)に関する問題です。時効取得による登記に関する問題も、司法書士試験では頻出問題となっています。

選択肢2. アウ

(ア)時効取得による所有権移転の登記の登記原因日付が登記権利者の出生日よりも前の日付となる場合でも、その所有権移転登記はできます。従って、本肢は正しいです。

(イ)B及びCの共有名義で登記されている甲土地をAが時効取得した場合に、Bが時効取得による共有者持分全部移転登記に協力しない場合には、AはC持分についてのみ、時効取得によるその持分移転登記をすることができます。従って、本肢は誤りです。

(ウ)Bを所有権の登記名義人とする甲土地を時効により取得したが、その時効起算日前にBが死亡していた場合には、時効取得による所有権移転登記の前提として、BからBの相続人に対する所有権移転登記を行う必要があります。従って、本肢は正しいです。

(エ)Aが甲土地を時効取得したが、時効の起算日よりも後に所有権登記名義人であるBが死亡し、その相続を原因とするCへの所有権移転登記がされている場合でも、その登記を抹消することなく、CからBに対する時効取得による所有権移転登記をすることができます。従って、本肢は誤りです。

(オ)占有者Aの時効取得完成後に第三者Cが甲土地の贈与を受け、その登記がなされた場合は、甲土地の所有権は確定的にCに帰属しているため、CからAに対する所有権移転登記はすることができません。従って、本肢は誤りです。

まとめ

この問題は過去問で出題された論点がほとんどなので、過去問をよく学習された方であれば、正解できたと思います。

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02

まず前提知識として、以下のことを確認しておきましょう。

 

ポイント1:時効取得の登記原因日付は、時効の起算日にさかのぼる。

ポイント2:占有状態は相続により承継できる。

ポイント3:時効完成後の登記は、民法177条の対抗要件である。

選択肢2. アウ

(ア)Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を占有していたが、甲土地の取得時効の完成前に死亡し、Aの相続人であるCが甲土地の占有を継続して甲土地を時効により取得した場合において、Cが当該時効の起算日より後に出生したときであっても、Cは、時効取得を登記原因として、当該時効の起算日の日付を登記原因の日付とする所有権の移転の登記を申請することができる。

 

解説冒頭のポイント2のとおり、CはAの占有状態を承継しています

これはあくまで相続なので、Cが起算日に出生していたか否かや、Cが成人しているか否かは関係ありません。

よって、本肢は正しいです。

 

 

(イ)Aは、B及びCが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、Bが共有者全員持分全部移転の登記に協力しない場合には、Aは、Cと共同して時効取得を登記原因としてCの持分の移転の登記を申請することはできない。

 

共有者は、民法206条により、自分が所有する共有持分を自由に処分することができます。

よって、Cは、Bとは無関係に自己の持分をAに移転できるため、本肢は誤りです。

 

 

(ウ)Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、その時効の起算日より前にBが死亡していた場合には、Aは、甲土地について相続を登記原因とする所有権の移転の登記をすることなく、Bの相続人全員と共同してBからAへの所有権の移転の登記を申請することはできない。

 

解説冒頭のポイント1のとおり、時効取得の登記原因日付は、時効の起算日にさかのぼります

本肢の場合、起算日より前にBが死亡しているため、Bの死亡~起算日の間は、甲土地の所有権はBの相続人に帰属しています。

そのことを適切に公示する必要があるため、相続の登記をしてから時効取得の登記をしなければなりません。

よって、本肢は正しいです。

 

 

(エ)Aは、時効の起算日より後にBが死亡し、Bの相続人であるCに相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされている甲土地を時効により取得した場合には、Cへの所有権の移転の登記を抹消した上で、Aは、Bの相続人全員と共同して所有権の移転の登記を申請しなければならない。

 

本肢は、時効の起算日~完成までの間に相続が起こったケースです。

このようなケースでは、時効の完成後に所有者の相続人全員が登記義務者となって時効取得による所有権移転登記をする義務を負いますが、本肢のように先に相続登記をしてしまうこともあるでしょう。

そしてこの場合、先にした相続登記を抹消せずとも、相続人を義務者として時効取得による所有権移転登記が可能です(登研401号159頁、昭37.3.8民甲638)。

よって、本肢は誤りです。

 

 

(オ)Aは、Bが所有権の登記名義人である甲土地を時効により取得したが、その後に、BがCに対し、甲土地を贈与しており、贈与を登記原因とするBからCへの所有権の移転の登記がされている場合には、Aは、Cと共同して時効取得を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。

 

解説冒頭のポイント3のとおり、時効完成後の登記は、民法177条の対抗要件です

AとCは対抗関係に立つので、本肢においては先に登記を済ませたCが確定的に所有権を取得します。

よって、本肢は誤りです。

まとめ

時効取得の問題は時系列が複雑になりやすいので、よく整理しましょう。

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