大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問51 (倫理(第3問) 問5)

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問51(倫理(第3問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

以下を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのD,E,Fは各々全て同じ人物である。

DとEは勉強を重ね、オンラインで「自由」をテーマにしたプレゼンテーションを共同で行い、他校の高校生Fを交えたディスカッションに臨んだ。

D:……以上をまとめます。私たちは、上のスライド資料に示したように、自由について整理しました。
F:スライド資料の自己決定という側面について、気になることがあります。私は高校を卒業したら就職するつもりです。経済的にも自立して、主体的に自己決定を行う自由が手に入って自分の将来への期待もある反面、不安も感じてしまいます。好きに選べると、かえって何も選べないというか…。いっそのこと、誰かに決めてほしい気もしてしまうんです。
D:実は私も、迷ってばかりで先に進まない、自由を持て余している弱い自分を発見して、嫌になってしまうこともあります。自分はなんてe無力で不安定な存在なんだろうって。
E:確かに、自由がある種の強さを求めてくることってありますよね。でも人間は必ずしも強くなくてもよいと思うんです。自分の弱さを素直に認めることができれば、f他者の弱さを思うことができる。それに、迷いながらも下した選択は、迷った分だけ一層貴重に思えるのではないでしょうか。そう考えれば、g自由の中で迷うことにも意味がある気がします。
F:そうか…。迷うこと自体が大事なんですね。私は、自由のネガティブな側面ばかりを見ていた気がします。敷かれたレールがなくなって不安になっても自由を手放さず、迷いながら自分で決定していきたいと思います。

下線部eに関連して、次の資料は、パスカルが人間の惨めさについて論じた文章である。パスカルの思想と資料の内容の説明として最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。

資料『パンセ』より
人間の偉大さは、その惨めさからさえ引き出されるほど、明白である。……我々は、人間の本性が今日では獣のそれと似ている以上、人間は、かつては人間固有のものだった、より善い本性から堕(お)ちたことを認めるのである。……王座を奪われた王でない限り、一体誰が自分が王でないことを不幸だと思うだろう。……自分に口が一つしかないからといって、誰が自分を不幸だと思うだろう。……我々にとって切実で、我々を喉首で押さえているこれらの惨めさ全てを見ながらも、我々には、我々を高めている押さえつけることのできない本能がある。……惨めさは偉大さから結論され、偉大さは惨めさから結論される。
問題文の画像
  • 人間が生きる三つの秩序のうち、愛の秩序こそ最上位にあると説いたパスカルは、資料では、人間は己の偉大さを深く省みることで、惨めにならずに済むと述べている。
  • 信仰は己の惨めさから目を背けるための気晴らしにすぎないと主張したパスカルは、資料では、人間は本来偉大な存在だが、そのことが逆に人間の惨めさを一層際立たせると述べている。
  • 人間は虚無と無限の二面を持ち、その間を揺れ動く中間者だと考えたパスカルは、資料では、人間は偉大な存在だが、惨めさという不幸の中ではその偉大さを見いだすことはできないと述べている。
  • 真理は合理的推論ではなく繊細な心情によって直観されると主張したパスカルは、資料では、人間は惨めな存在だが、それは人間が偉大であることの証拠でもあると述べている。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (1件)

01

この問題では、パスカルの思想と資料を正しく読み取る必要があります。

 

パスカルは、人間の存在や行動などを身体の秩序、精神の秩序、愛の秩序の3つの秩序に分類し、特に愛の秩序は最上位に位置するとしました。

また、パスカルは悲惨なことから目を背けるために娯楽や遊びに熱中することを「気晴らし」と呼びました。そしてパスカルは人間を偉大さと悲惨さの中間者と位置付けました。また、パスカルは「繊細の精神」によって、理論や推論ではなく直感を重視しました。

選択肢1. 人間が生きる三つの秩序のうち、愛の秩序こそ最上位にあると説いたパスカルは、資料では、人間は己の偉大さを深く省みることで、惨めにならずに済むと述べている。

不適切

 

パスカルは、人間の存在や行動などを身体の秩序、精神の秩序、愛の秩序の3つの秩序に分類し、特に愛の秩序は最上位に位置するとしたため、「人間が生きる三つの秩序のうち、愛の秩序こそ最上位にあると説いたパスカル」は適切でありますが、

資料には『人間の偉大さは、その惨めさからさえ引き出されるほど、明白である。』『惨めさは偉大さから結論され、偉大さは惨めさから結論される。』とあるため、「惨めにならずに済むと述べている。」が不適切になります。

選択肢2. 信仰は己の惨めさから目を背けるための気晴らしにすぎないと主張したパスカルは、資料では、人間は本来偉大な存在だが、そのことが逆に人間の惨めさを一層際立たせると述べている。

不適切

 

パスカルは、死や孤独などの悲惨さから目を背けるための気晴らしにすぎないと主張したのは、娯楽や遊びであり、信仰ではありませんでした。

 

 

選択肢3. 人間は虚無と無限の二面を持ち、その間を揺れ動く中間者だと考えたパスカルは、資料では、人間は偉大な存在だが、惨めさという不幸の中ではその偉大さを見いだすことはできないと述べている。

不適切

 

人間は虚無と無限の二面を持ち、その間を揺れ動く中間者だと考えたパスカル」は適切になります。ただ、資料より『我々を喉首で押さえているこれらの惨めさ全てを見ながらも、我々には、我々を高めている押さえつけることのできない本能がある。……惨めさは偉大さから結論され、偉大さは惨めさから結論される。』と記されている為、「惨めさという不幸の中ではその偉大さを見いだすことはできないと述べている。」は不適切になります。

選択肢4. 真理は合理的推論ではなく繊細な心情によって直観されると主張したパスカルは、資料では、人間は惨めな存在だが、それは人間が偉大であることの証拠でもあると述べている。

適切

 

パスカルは「繊細の精神」によって、理論や推論ではなく直感を重視しました。

また、資料より『惨めさは偉大さから結論され、偉大さは惨めさから結論される。』と結論づけているため、適切になります。

 

参考になった数0